第2回送水口ウォークルポ(前編)

去る2014年3月21日(祝)、第2回送水口ウォークが開催されました。
主催者は【送水口倶楽部】の管理人、Ayaさん。

第1回は銀座7~8丁目の送水口を観察。
今回も同じ中央区ですが、「送水口ロード」と名付けられた茅場町界隈と、4月から本格的に始まる日本橋再開発で無くなってしまう日本橋2丁目界隈の送水口達をじっくり観察してきました。

その模様を前編後編に分けて掲載します。
前編は茅場町篇です。

朝8時半。
晴天に恵まれるも冷たい風が吹く中、ダウンコートから長袖Tシャツ一枚の方まで様々な装いの男女10人が、東京都中央区茅場町にある坂本町公園に集合。

出発前に参加者全員の自己紹介後、資料としてこんな素敵な物が配られました。

「送水口ファン第1〜3号」と「送水口ウォーク資料」!
第1号は第1回送水口ウォークの様子、第2号は送水口アクセサリーの事、そして第3号は「送水口ロードと開発で消え行く送水口を巡る一日」と題した今回のルートの地図が掲載されています。

持ち運びしやすいようにと、ソフトクリアファイルに入れた状態で頂きました。
そういった心遣いがさすがです。
おかげさまで散策中も確認しやすく、強い風にも負けず、丸めて持ち運んでも折り目が付かず、綺麗な状態のまま家に持ち帰れました(^^)

さて出発です。
どんな送水口達と出会えるのかワクワクです。

公園の隣にある区立坂本小学校を通り「送水口ロード」へ。
「一見素朴な街並み。しかしここが実は送水口ロード。ここを通り抜けた時には誰でも送水口が好きになっている・・・かもしれません(送水口ファン第3号より)」

ここは基本的な様々なタイプの送水口達が集まる道だそうです。
高まるっ!

基礎知識のレクチャー後、壁埋設型の送水口の紹介。
ネジ式と差し込み式があり、ネジ式にはツメやギザギザの蓋が付いていて、新しい物には差し込み式が多いそうです。
(すみません、説明を聞いていて肝心の送水口の写真を撮るのを忘れてしまいました>_<)

第二大谷ビルの壁埋設型単口送水口。

金属製の赤い蓋が素敵です。
ピカピカ過ぎずいい具合の輝き。とても好みです。

単口は、昭和20〜30年代のまだ送水口設置が厳密に法令で決まっていない時代に付けられた物だとか。
7階以上の建物ではないけれど、付けないのも不安なので取り敢えず口が一つの物でいいから付けておこうという建物オーナーさんの意思の表れ?

ロゴのアップ。

横から見たところ。ポロっと取れそうなくらいデベソで可愛い。

自立(スタンド)型送水口と採水口。

採水口は水を取り出すための物で、その下には防火貯水槽がある。上についているデベソは開放弁。蛇口の役目です。といった説明を受けている時、ちょうど後ろに消火栓の蓋があったので、参加者から「採水口は消火栓と同じですか」という質問があがりました。

消火栓(水道消火栓)は上水道管に繋がっていて水道局の管轄。飲み水と同じ上水が出てくる(公共の物)。
送水口や採水口、防火貯水槽は消防署の管轄で、貯水槽には水が溜まっているだけなので、使ってしまったら無くなる(建物のオーナーの物)。
(余談ですが、消火栓からの消火活動に使う水道代は、火事になった建物のオーナーさんには請求されないそうです。←水道代が払えないからと消火を途中でやめる訳にはいかないので)

そしてこの送水口と採水口の後ろにはもう一つ重要なポイントが。

それは、かつての送水口の遺構です。

後ろにあるステンレス製の四角形は、かつてそこに壁埋設型の送水口があった場所なのです。

この送水口達は新しいタイプのステンレス製。
でも建物はそれほど新しくない。。。
そういった組み合わせの場合は、大抵どこかに遺構があるそうです。

古い送水口を外し、そのまま新しい物を設置する場合もありますが、この様に新たに別の型式の物を設置する事はよくあるそうです。

今までもこういった物は何度も見てきましたが、遺構とは知りませんでした。
後編の日本橋篇でもこういった遺構を沢山見ました。
以来送水口本体と同じ位、遺構の存在が気になってしかたありません。どの様な処理をしているのか興味津々です。

「包まれ送水口」
オーナーさんが大事にしているのか、送水口をビニール袋で包んでいる送水口を観察。
下がテープでぐるぐる巻きになっていたので、もしこれを使う際には消防隊の方達がとても迷惑するだろうという話で盛り上がりました。
(すみません、これも写真を撮っていませんでした。。。)

東京消防庁日本橋消防署別館兜寮の自立型送水口。


前述の自立型とは違い、繋がっている管が見える状態の物。

東京消防庁日本橋分室の注水口。

採水口の下の防火貯水槽の水が無くなったら、ここから水を入れます。

注水口を見たのは初めてだったのでじっくりと眺めていたら、進行方向に見た事のない光景が!

なんと、偶然にもホース脱着訓練に遭遇!!!

その幸せと歴史的瞬間を残そうとする送水口愛好家達。

火災現場ではない所でホースが伸びている消防車を見るのは初めて。しかも送水口に繋がっている!
興奮のあまり消防車からホースが繋がっている送水口の写真を撮れず後悔。
でも、参加者の方がTwitterにあげていらっしゃったので、お気に入りに登録させていただきました(^^)
複数での観察はこういう事も嬉しいですね。

送水口を囲んでいる興奮気味の集団に、何事かと消防隊員さん二人が近づいてきました。

ああ、こんな珍しい光景とこんなに素敵な送水口達と早くもお別れなのね、と諦めるしかないと思っていたその時、Ayaさんが事前の下見でここの隊長さんからいろいろとお話を伺ったという話をされ、「送水口ファン」と「送水口ウォーク資料」を渡し、このイベントの趣旨を説明したところ、不審者扱いどころか訓練後ホースを外すところまで見せて下さいました。

外すと同時に「おおーっ!」と怪しい集団から上がるどよめきの声。
動揺&照れながらも、笑顔で脱着実演や質問に答えてくださった消防隊員さん。
繋がったところも外すところも実際に見たのは初めてで大興奮でした。

アンコールとばかりに一度外したホースを再び接続し、何度も脱着作業を見せて下さる隊員さん。

ホースを外し、送水口との間に残っているグレーの金具はアダプターだそうで、規格が異なる送水口にもきちんとホースを固定しなければならないので、必ずこれを付けて接続するそうです。

ホースが外れた送水口。普段は蓋がされていて見えない中が見えます。

ちなみに、下の壁の傷は訓練時急いでホースを繋げる際、外した蓋がぶつかって出来た物だそうです。

(下見時Ayaさんが隊長さんから聞いた話)

この消防署では毎日送水口や採水口を磨いているそうでピカピカでした。

お仕事中なのに長々と対応していだたきありがとうございました(^^)

理解ある隊員さん達に感謝しながら何度も何度もお礼を言い立ち去る一同。
名残惜しく振り向くと、そこにはAyaさんが手渡した「送水口ファン」と「送水口ウォーク資料」一式を食い入る様に読んでいる隊員さん達の姿が。
自分達が普段仕事で使っている物にこんなに興味を持っている人達がいるとは、さぞかし驚いた事でしょう。
きっと次に訪問した際には、送水口に熱視線を送る怪しい姿にも微笑を返して下さる(はず)。

興奮醒めやらぬまま進むと、今度は鏡に映る姿が美しい送水口が。

壁埋設の露出Y型送水口。

指紋一つない程磨き上げられた鏡の壁面。どちらが送水口本体だか分からないくらいの映り込みです。
こういった茶色の送水口は、昭和50年代の物が多いそうです。

同じ露出Y型ですが、今度は緑青が美しい、太陽ビル新館1の送水口。

二点しんにょうの送の文字。
ちょっと斜めになっているのが残念ですが、オーバル型のプレートがまた美しい。

横から。

蓋が無くなり、中の弁が見えています。

首の付け根とロゴのアップ。

中心の支えだけで浮いている透かしロゴが可愛く、首の付け根の緑青の浮き具合がたまりません。

この建物の定礎にはオーナーさんであろう人の名前が掘られていて、この一角の建物の定礎にもその名前があったので、その人がどうしてこの送水口を付けたのか、建物を造る際どんなこだわりがある人だったのかなど、いろいろと空想して盛り上がりました。

様々なタイプの送水口達を観察出来たところで茅場町での散策は終了。
途中休憩を挟み、次は日本橋2丁目界隈へ。
(後半に続く)

〈2014年3月21日撮影〉